遺言書とは、遺言者の思いを残された家族に託す手紙です。

そして、遺言者の自由な意思により、財産の分配の指定ができ、残された家族が円滑に相続手続きを進ませることができるものです。

そんな遺言書には、いくつか種類がありますので解説していきたいと思います。

自筆証書遺言

まず、一番馴染みのある遺言書といえば、この自筆証書遺言ではないでしょうか。

箪笥や仏壇などに、自筆で書いた遺言書をこっそりと隠しておく・・・

こんなワンシーンをドラマや映画で見た方もいるのではないでしょうか。

これは自筆証書遺言といいます。

この、自筆証書遺言のメリットとしては、費用を掛けることなく内容を秘密にしたまま作成することができる点です。

デメリットとしては、財産目録以外を全て自筆が必要であり、しっかりとした要式にしなければ遺言書として無効となってしまいます。

また、こっそりと自筆証書遺言を作成してどこかに隠していたとしても、そのまま発見されずに遺産分割協議が終了してしまったり、誰か親族に見付かってしまい、改竄をされてしまったり、そのまま紛失してしまったりなど危険があります。

また、しっかりとした要式で作成され保管されていたとしても、遺言書の開封には家庭裁判所による検認が必要であり、勝手に開封してしまうと5万円以下の過料となります。

また、検認には約1カ月以上かかり、他には相続人の戸籍謄本などの資料収集が必要となってきます。

もっとも、令和2年7月10日から法務局による自筆証書遺言書保管制度が始まり、このデメリットが解消されます。

これは、指定の法務局の遺言書保管所東京都は、本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局となります。令和2年4月1日現在)において、自筆証書遺言を保管してもらうことができます。

保管申請には3,900円が掛かりますが、原本の保管やデータ化も行い、相続開始後に、相続人の1人に遺言書の証明書を交付したり遺言書の閲覧をさせた場合、他の相続人に遺言書が保管されていることを通知してくれます。

また、家庭裁判所による検認は不要となりますので、スムーズな相続手続きが可能となります。

また、法務局としては不動産名義変更の相続登記の促進にも繋がるとして期待しております。

このように、自筆証書遺言のデメリットをなくす保管制度ですが、まだ開始されていないので実態はわかりません。

遺言書を保管する際に形式面だけではなく、内容面まで確認をしてくれるであろうか、遺言書保管所は今後どこの支局、出張所でも扱ってくれるのであろうかなど、今後に期待できる制度です。

参照: 法務省HP→『法務局における自筆証書遺言書保管制度について

公正証書遺言と秘密証書遺言

公正証書遺言と秘密証書遺言については、どちらも公証役場にて作成が必要となり証人2名の出頭が必要となります。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、遺言者の案文を基に、公証人が公証役場にて作成した遺言書で、公証役場にて保管されるものです。

作成のためには、まず遺言者の出生から現在までの戸籍謄本の収集や自身の財産を全て調査することが必要となります。

そして、どのように財産の分配を行うかを決め、付言事項の記載や遺言執行者を任命するのであれば、その内容も案文に入れ込んで、ようやく公証役場にて作成されます。

メリットといえば、公証人が作成する遺言書なので不備がないことと、保管は公証役場にて行われること、検認が不要であることです。

デメリットは、戸籍謄本の収集や財産調査、公証役場との連絡の取り合いなどが時間手間が掛かること、費用が掛かることが挙げられます。

以下は、公正証書による遺言書作成件数です。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、公正証書遺言と同じように公証役場にて署名捺印がされるものですが、大きな違いとして、内容を秘密にして作成をすること、保管は遺言者自身がする点です。

封書に、遺言書である旨の記載と氏名住所の記載、遺言者と公証人と証人2名の署名捺印が必要となります。

メリットは、何よりも内容を秘密にでき、証人にも内容を伏せた状態で公証ができる点です。

また、自筆だけではなくパソコン作成や代筆でも作成が可能となります。

デメリットは、内容を誰も把握できないため、要式の不備により遺言書が無効となってしまうことや、遺言者本人の保管なので、自筆証書遺言と同じように紛失・隠匿・改竄・偽造の恐れがあります。

また、家庭裁判所による検認も必要でありますので、手続き面も時間が掛かってしまいます。

まとめ

以上のように、遺言書の種類によってメリットとデメリットがあります。

また、令和2年7月10日から始まる自筆証書遺言書保管制度も伴わせて、それぞれの特徴を知り、遺言書の作成をされてはいかがでしょうか。

また、ご自身だけでは遺言書の作成が不安だという方は、いわゆる専門職と呼ばれる士業に相談されることをお勧めします。

当事務所でも初回無料相談を行っておりますので、どうぞご利用くださいませ。

→ 行政書士 西東京事務所