前回のブログでは、遺言書には種類がありメリット・デメリットがあることを述べましたが、そもそも遺言書自体のメリット・デメリットは何かも知っておく必要があります。

前回のブログ→『遺言書とは? 遺言書の種類は?

それでは、遺言書作成のメリット・デメリットについてまとめていきたいと思います。

メリット

遺言書は、遺言者の自由な意思により、財産の分配の指定ができるところが最大のメリットです。

これにより、無用な相続人同士の遺産分割協議を避けたり、残された家族がスムーズに相続手続きへと進ませることができます。

また、遺言書には付言事項というものを記載することができます。

付言事項とは

この付言事項というものは、遺言書の末尾に付されるものですが、記載がなくても構わないものです。

しかし、あえて言うのであれば付言事項は記載するべきかと思います。

遺言書には、『誰が・どの財産を・誰に相続させる』と、相続に関する文章がメインに記載されます。

そのため、財産についての内容のみで少し冷たい印象を持ちます。

また、この財産の分配方法がなぜよかったのかなど、遺言者の意図を知ることはできません。

そこで、付言事項を記載します。

付言事項には、自由に文章を記載することができるので、そこで財産の分配についての説明や、残された家族に宛てたメッセージを記載しましょう。

それによって、遺言書を受け取る相続人たちの気持ちも変わってくることでしょう。

また、財産の分配において遺留分(以下で説明)を侵害しつつも、付言事項により各々の相続人に納得してもらい、円満に相続をしてもらうということもあり得ることでしょう。

他にも、長年連れ添った奥様に宛てた手紙としても利用できますし、お子様に対しても、自分の死後、どのようにして欲しいかなど伝えることができます。(ただし、付言事項には法的拘束力はありません。

以上のことから、付言事項により遺言者の人柄や思いが遺言書に反映することにより、より人間味のある遺言書になると考えております。

そのため、当事務所のお客様には、付言事項の文面作成をなるべくお願いしております。

遺言執行者について

他にも、遺言執行者というものを決めておくことができます。

遺言執行者とは、遺言者が亡くなられた後に行われる相続手続きを行う者です。

遺言書に記載された内容を実現する者ですので、遺言者が事前に信頼できる人を選任しておきます。(遺言書によって選任されていなくても、遺言者や選任していた遺言執行者が死亡した際に、家庭裁判所に申し立てることにより選任することも可能です。)

もちろん、この遺言執行者は決めておかなくても構いませんが、是非とも選任しておいた方がよろしいかと思います。

なぜなら、遺言執行者がいない場合には相続人たちが預貯金口座の解約不動産の名義変更登記株式・債権などの各種名義変更をしなければなりません。

もちろん、平日の昼間しか開いていない窓口が多いので、仕事をしながら手続きをしていると、半年などあっという間に過ぎてしまいます。

なぜかというと、たとえば預貯金口座の解約の際、遺言執行者が選任されていないと、相続人全員の署名捺印の入った遺産分割協議書相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書の提出が必要など、手間と労力が掛かってしまいます。

その点、遺言執行者が選任されていれば単独で手続きができ、スムーズな手続きが可能となります。

また、遺言執行者には相続人だけではなく、いわゆる士業といわれる専門職を選任することも可能なので、遺言書の作成の相談をすると共に、遺言執行者の選任についてもお願いしてはいかがでしょうか。

デメリット

遺言書のデメリットとして挙げるのであれば、

  • 作成までに手間がかかる
  • 不備があると無効になってしまう
  • 遺留分について考慮しなければならない
  • 希望通りの遺産分割にならないことがある

以上の点ではないでしょうか。

まず、作成するにあたって、遺言者の出生から現在までの戸籍謄本の収集を行い、相続人の特定をいたします。

この、収集がとても大変で、遺言者の本籍を遡っていくこととなり、遠方ですと郵送でのやり取りとなりこれだけで時間が掛かってしまいます。

さらに、昔の戸籍謄本(改製原戸籍)になってきますと、手書きの戸籍謄本となり読み解くのが難しいこともあります。

次に、財産についてもしっかりとリストアップしておかなければなりません。

預貯金口座であれば、銀行名・支店・種類・口座番号を控え、不動産であれば、住所地ではなく地番や家屋番号にて特定しなければなりません。

他にも株式や債権、ローンなどの債務もあればそれも記載が必要となります。

そして、ようやくどの財産を誰に渡すかなど決めていきますが、ここで法定相続分遺留分について考慮しなければなりません。

法定相続分と遺留分とは

まずは、法定相続人について知っておかなければなりません。

法定相続人とは、遺言書がなくても必ず財産を貰える相続人のことです。

配偶者は常に相続人となり、子・親・兄弟姉妹とそれぞれ相続人になる順位が定められております。

※ 配偶者と順位が最も高い者のみが法定相続人となり、後順位の者は相続人にはなりません。
 また、配偶者がいない場合には、順位が最も高い者のみが相続人となり、逆に配偶者のみで順位付けられている人がいない場合には配偶者のみが相続人となります

そして、相続人が確定するとそこから法定相続分が決まっていきます。

法定相続分とは、遺言書による財産の分配を指定していない場合に、以下のように法定相続人に対して決められた割合で財産の分与をさせるものです。

→ 配偶者と子の場合 1/2

→ 配偶者と親の場合には、配偶者 2/3

→ 配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者 3/4

もっとも、遺言書で法定相続分を気にせず財産を分配することができます。

ただし、ここで遺留分というものがあり、法定相続人が貰えるべき割合が定められております。

もちろん、遺言書で相続分がない場合でも主張ができます。

遺留分の割合は、法定相続人が配偶者や子の場合には遺留分が遺産の1/2が保障され、親のみだと1/3が遺留分として主張できます(兄弟姉妹には遺留分はありません)。

→ 配偶者や子の場合 1/2

→ 親のみの場合 1/3

図にすると以下のようになります。

遺留分の例: 遺産15,000万円の場合

  • 相続人が配偶者と子供2人の場合

 → 配偶者3,750万円(1/2×1/2)、子供1人1,875万円(1/2×1/2×1/2)

  • 相続人が配偶者と両親の場合

 → 配偶者5,000万円(1/2×2/3)、両親1人1,250万円(1/2×1/3×1/2)

まず、遺産から遺留分を出し、そのあとは残された法定相続人の相続分で分けることとなります。

このように、もし何も考えずに遺留分を侵害する遺言書が作成されると、後々、遺留分を侵害された親族から遺留分侵害額請求をされてしまう恐れがありますので注意が必要です。

もし、何か意図して遺留分を侵害する遺言書を作成するのであれば、前述した付言事項にて理由を説明しておくことが必要かと思います。

まとめ

このように、遺言書作成にはとてもメリットがあり、自身の意思を明確に示せる最後のお手紙でもあります。

付言事項や遺言執行者の選任なども盛り込めば、さらに厚みのある遺言書となり、残された家族の負担も軽減され円滑な手続きとなります。

ただし、遺言書の作成には戸籍を集めて相続人を確定したり、財産目録を作成したり、遺留分を気にしたり・・・。

さらに、遺言書作成は細心の注意が必要であり、しっかりとした要式でなければ無効となってしまうこともあります。

自分一人では作成が大変だと思う方は、是非とも私たち行政書士などの士業にご相談いただければと思います。

士業に頼むメリットは、戸籍の収集や財産目録の作成を任せられ、しっかりとした遺言書を作成でき、さらには遺言執行者に選任できたりもします。

遺言書作成にお悩みの方は、まずは、初回無料相談をご利用くださいませ。

→ 行政書士 西東京事務所